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子のない夫婦の相続で注意したいこと|配偶者に全部残すには遺言書が必要

2026年04月22日
法務税務
子のない夫婦の相続で注意したいこと|配偶者に全部残すには遺言書が必要

子のない夫婦が増える中で相続の落とし穴に気づきにくい

子どものいない夫婦にとって、「自分たちの財産は、いずれ残されたほうに全部引き継がれる」と思っている方は少なくありません。実際、滋賀県内でも夫婦のみ世帯は年々増えていて、滋賀県の統計ハンドブック2024によると、滋賀県の一般世帯の約20%が夫婦のみの世帯です(滋賀県総合企画部統計課 しが統計ハンドブック2024)。高齢世代になるほどこの比率は高く、65歳以上の夫婦のみ世帯は全国で3割を超えています(内閣府 高齢社会白書)。

ところが、実際に一方が亡くなったとき、「配偶者がすべて相続する」とは限りません。民法では配偶者以外に法定相続人が決まっていて、子どもがいない場合は義理の親や義理の兄弟姉妹と一緒に相続することになります。遺言書がないまま相続が始まると、残された配偶者が想定していなかった相続人と遺産分割協議をしなければならず、心身ともに大きな負担になります。弊社でも、義兄弟姉妹が全国に散らばっていて連絡を取るだけで2か月以上かかった相続のご相談を受けたことがあり、残された配偶者の負担の大きさを目の当たりにしました。

法定相続人は配偶者だけではない:3つのパターンを理解する

子のない夫婦の相続では、亡くなった方(被相続人)の親や兄弟姉妹の存否によって、相続人の顔ぶれが変わります。国税庁「相続人の範囲と法定相続分」に整理されています(国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分)。

パターン1:被相続人の親が健在の場合

配偶者と親(直系尊属)が相続人になります。

  • 配偶者:法定相続分 2/3
  • 親:法定相続分 1/3

父母の両方が既に他界している場合で、祖父母が健在であれば、祖父母が相続人になります(父母のうちどちらか一方でも健在であれば、祖父母は相続人になりません)。

パターン2:親は既に他界し、兄弟姉妹が健在の場合

配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。

  • 配偶者:法定相続分 3/4
  • 兄弟姉妹:法定相続分 1/4(兄弟姉妹が複数いれば均等に分ける)
パターン3:兄弟姉妹も他界しているが甥姪が健在の場合

兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合、その子(甥姪)が「代襲相続人」として相続人の立場を引き継ぎます。代襲は甥姪の代までで、その子以降(姪孫など)には及びません。

甥姪が遠方に住んでいて連絡先が分からない、面識がほとんどないというケースもあります。相続が始まってから初めて連絡を取ることになり、遺産分割協議が難航しやすい組み合わせです。

「遺言書があれば全部配偶者に残せる」は本当か:遺留分のルール

遺言書を書けば、法定相続分と違う分け方を指定できます。ただし、相続人の一部には「遺留分」という最低限の取り分が保障されていて、これを無視した遺言は後からやり直しを請求される可能性があります。

兄弟姉妹・甥姪には遺留分がありません。ここが子のない夫婦の相続対策で大きなポイントです。つまり、親が既に他界していて兄弟姉妹・甥姪だけが法定相続人になるパターンであれば、「すべての財産を妻(または夫)に相続させる」と遺言書に書いておけば、兄弟姉妹から遺留分を請求されることはありません。

一方で、親が健在のパターンでは注意が必要です。親には遺留分があり、配偶者と親が相続人の場合の親の遺留分は法定相続分の1/2、つまり遺産全体の1/6にあたります。遺言で「全財産を配偶者へ」と書いても、親から1/6分を請求される可能性が残ります(大阪法務局 相続人・相続分の整理図)。

よくある誤解
  • 「内縁の妻にも遺留分がある」→ ×。法律上の配偶者でなければ相続人になれません。
  • 「義理の兄弟姉妹と縁を切れば相続人から外せる」→ ×。義絶や絶縁は法律上の制度ではなく、縁を切っても相続人の立場は消えません。
  • 「公正証書遺言でないと効力がない」→ ×。自筆証書遺言でも要件を満たせば有効ですが、形式不備・紛失リスクを避けるなら公正証書遺言が安心です。

実際、生前対策のご相談で自筆証書遺言を作成されていた方が、要件不備や紛失のリスクを懸念されて公正証書遺言に切り替えたところ、「これで家族に迷惑をかけずに済む」と安心してお帰りになった事例もあります。

子のない夫婦が生前にやっておくべき4つの対策

相続が始まってから慌てないために、次の4点を早めに整えておくと、残された配偶者の負担が大きく変わります。

  1. 夫婦それぞれが遺言書を作る:どちらが先に亡くなるか分からないため、両方が用意しておく。滋賀県内の公証役場(大津・彦根・長浜・甲賀など)で公正証書遺言を作成すれば、家庭裁判所の検認も不要で紛失リスクもありません。子のない夫婦以外にも遺言書を用意しておくべきケースは複数あり、判断の目安は遺言書を書くべき人の特徴5つでも整理しています。
  2. 生命保険の活用:死亡保険金は原則として受取人固有の財産で、遺産分割協議の対象外です。配偶者を受取人に指定しておけば、相続発生後すぐに現金を受け取れます。相続税の非課税枠(500万円×法定相続人数)も活用できます。ただし非課税枠の適用対象は相続人が受け取る死亡保険金に限られ(相続放棄した人や内縁の配偶者などは対象外)、また遺産全体に比して極めて多額の保険金を特定の相続人が受け取る場合は特別受益として扱われる可能性がある点(最判平成16年10月29日)に留意してください。
  3. 財産目録の作成と共有:預貯金・不動産・有価証券・保険など、どこに何があるかを一覧化して夫婦で共有しておく。一方が亡くなった後、残された配偶者が財産を把握できずに困るケースは非常に多いです。
  4. 兄弟姉妹との関係整理:疎遠な兄弟姉妹・甥姪がいる場合、連絡先だけでも把握しておく。遺言書で全財産を配偶者に残す場合も、遺言書の存在を伝えておくとトラブルが減ります。

また、子のない夫婦では「二次相続」(先に亡くなった配偶者の次に、残された配偶者も亡くなった時の相続)が大きな論点です。夫婦のどちらにも子がいないため、残された配偶者が亡くなった時には、その配偶者側の兄弟姉妹が相続人になります。先に亡くなった配偶者の兄弟姉妹には財産が渡らないので、「もらった財産をどう次に引き継ぐか」を夫婦で話し合っておくことが重要です。二次相続で相続税が大幅に増える仕組みや節税の考え方は、二次相続で相続税が大幅に増える理由|配偶者控除の使いすぎに注意で詳しく解説しています。

相続税の基礎控除と配偶者の税額軽減

相続税が発生するかどうかは、遺産総額が基礎控除額を超えるかで判断します。基礎控除の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。

子のない夫婦の相続で相続人が配偶者と兄弟姉妹3人の場合、法定相続人は4人となり、基礎控除は3,000万円+600万円×4=5,400万円です。滋賀県内で自宅不動産(評価額2,000万円程度)と金融資産を合わせて5,000万円前後という世帯は珍しくなく、相続税申告が必要になるケースは想像以上に多いです。

ただし、配偶者には「配偶者の税額軽減」という大きな優遇があります。配偶者が取得する財産が法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額までは、相続税がかかりません(国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減)。子のない夫婦では配偶者の法定相続分が3/4にもなるため、ほとんどのケースで配偶者には相続税がかからない結果になります。配偶者の税額軽減の仕組みと申告時の注意点は、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは|1.6億円の仕組みと申告の注意点で詳しく整理しています。

一方で兄弟姉妹・甥姪が相続する部分には、通常の相続税額に2割加算されるルール(相続税額の2割加算)が適用されます。遺産の分け方によって、家族全体での納税額が大きく変わる点は見落とされがちです。

滋賀相続相談所の相続サポート:遺言書作成から相続税申告まで

相続が発生する前の「遺言書作成サポート」と、発生後の「相続税申告・相続手続き」を、税理士と提携司法書士でワンストップ対応しています。子のない夫婦の相続対策は、遺言書・生命保険の見直し・二次相続まで含めた総合設計が必要で、税務・法務の両面からの助言が欠かせません。

対応エリアは滋賀県全域(大津市・草津市・守山市・彦根市・長浜市・近江八幡市など)で、必要に応じて京都・大阪エリアの公証役場にも対応しています。子のない夫婦の遺言書作成をお手伝いしたクライアントでは、親の遺留分が残るリスクを丁寧にご説明したうえで「配偶者にすべての財産を相続させる」内容の遺言書を作成し、「リスクは残っても、何も用意しない状態よりはずっと安心できました」と喜んでいただいたこともあります。

相続発生後に相続人全員の口座に資産が振り分けられたあと、配偶者の確定申告や不動産の賃貸収入の管理などが発生するケースもあります。必要に応じて経理代行サービスと連携して、相続後の日常の経理まで一括でサポートできます。

まとめ

子のない夫婦の相続で押さえておきたいポイントは次の3つです。

  1. 法定相続人は配偶者だけでなく、親・兄弟姉妹・甥姪も入ってくる。配偶者にすべて残すには遺言書が必須
  2. 兄弟姉妹・甥姪には遺留分がないので、兄弟姉妹だけが他の相続人のケースでは遺言の効力が強い。親が健在なら親の遺留分1/6に注意
  3. 遺言書・生命保険・財産目録・二次相続対策の4点を、元気なうちから夫婦で整えておく

法定相続分で分けようとすると、疎遠な義兄弟姉妹と遺産分割協議が必要になり、残された配偶者の大きな負担になります。一方で、遺言書1枚があるかないかで、相続後の生活の安定感がまったく違ってきます。

子のない夫婦の相続対策は専門家へご相談ください

滋賀県草津市に拠点を置いており、草津市・大津市・守山市・栗東市・彦根市・近江八幡市など滋賀県全域の相続に対応しています。

遺言書作成サポート・相続税申告・相続手続き・生前対策を承っています。

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