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マンション評価通達(タワマン6割評価)の影響|2024年運用から3年経過と2027年見直し

2026年06月03日
税務

2024年1月施行のマンション評価通達とは|タワマン節税への国税庁の対応

居住用の区分所有財産(分譲マンション)の相続税評価は、2024年1月1日以後に発生した相続・遺贈・贈与から新しい計算方法に変わりました。これは2023年10月6日に国税庁が公表した「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)に基づくものです。背景にあるのは、タワーマンションを中心とした「評価額と市場価格の大きな乖離」を利用した相続税節税スキームへの対応です。

国税庁の平成30年実態調査では、相続税評価額と市場価格の平均乖離率が2.34倍にも達していることが報告されており、特に高層階・大都市圏のタワーマンションでは時価1億円の住戸が相続税評価額3,000万円台になるケースも珍しくありませんでした(国税庁・居住用の区分所有財産の評価について(PDF))。

弊社で対応した京都市左京区のタワーマンション(時価1.2億円)の事例では、改正前評価額は約4,500万円でしたが、改正後評価額は約7,200万円に上昇しました。新通達の核心は「マンション一室の理論的な市場価格と現行評価額との乖離率が一定水準を下回る場合、60%まで評価額を補正する」という仕組みです。土地は路線価・建物は固定資産税評価額という従来の財産評価基本通達の計算方法は維持されたまま、最後に補正率をかけることで時価との乖離を縮める設計です。マンション評価の基礎(建物部分と土地部分の評価方法)についてはマンションの相続税評価額についてで解説していますので、本記事はその応用編として2024年改正以後の論点に絞って説明します。

補正率の計算式|築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素

新通達の補正率は4つの要素で「評価乖離率」を計算し、評価水準(評価額÷市場価格)が0.6を下回るマンションに補正がかかります。計算式は次の通りです。

評価乖離率 = A+B+C+D+3.220

  • A:築年数 × △0.033(築年数が古いほどマイナス=乖離が小さい)
  • B:総階数 ÷ 33 × 0.239(総階数33階で1.0、それ以上は1.0でキャップ)
  • C:所在階 × 0.018(高層階ほど乖離が大きい)
  • D:敷地持分狭小度(敷地利用権面積÷専有部分面積)× △1.195(敷地持分が小さいほど乖離が大きい)

評価水準は「1÷評価乖離率」で計算します。評価水準が0.6未満(評価額が時価の60%未満)の場合、評価額に「評価乖離率×0.6」を乗じて補正します。逆に評価水準が1.0を超える(評価額が時価より高い)場合は「評価乖離率×1.0」で逆方向の補正もあります。

具体例で見ると、築5年・総階数40階・所在階25階・敷地持分狭小度0.10のタワマンの場合、計算は次のようになります。A=5×△0.033=△0.165、B=1.0×0.239=0.239(40階だが33階でキャップ)、C=25×0.018=0.45、D=0.10×△1.195=△0.1195。これらの合計+3.220で評価乖離率は約3.624、評価水準は約0.276となり、補正率は3.624×0.6=約2.17倍。つまり改正前の評価額に約2.17倍を乗じて補正します。

築年数の数え方は建築時から課税時期までの期間で1年未満の端数は切り上げ。総階数は地上の階数のみで地下は含めません。所在階が複数階にまたがる場合は低い方の階を採用します。実際にご自身のマンションで評価乖離率を試算したい方は、当事務所の居住用マンション評価シミュレーションもご利用ください。

改正前後で節税効果はどのくらい変わったか

具体的な節税効果の縮小幅を、典型的なケースで比較します。前提として、東京都内の築5年・30階建てタワマンの3LDK(時価1億円)を購入し、相続時に評価する場合を想定します。

改正前の評価額は、土地(敷地持分)が路線価ベースで約2,500万円、建物(固定資産税評価額)が約1,000万円で、合計約3,500万円。時価1億円に対する評価率は35%でした。

改正後は、評価乖離率の計算で約2.85倍程度の補正がかかり、評価額は3,500万円×2.85×0.6(評価水準0.6への引上げ)で約5,990万円。時価1億円に対する評価率は約60%まで上昇します。

結果として、改正前と比べて評価額は約2,500万円増加し、相続税の節税効果も約半分に縮小しました。とはいえ、現金1億円を相続するより4,000万円以上の評価減効果は残るため、タワマンによる節税が「終わった」わけではなく「効果が半減した」段階です。

低層階・郊外マンション・築古マンションは元々評価額と時価の乖離が小さいため、新通達の補正がかからない(評価水準1.0以上)または補正幅が小さいケースが多く、影響は限定的です。一方、新築・高層階・大都市中心部のタワマンほど補正幅が大きく、節税効果の縮小が顕著です。

改正後も使える節税ポイント|小規模宅地・生前贈与・家族信託

評価通達の改正後も使える節税手段は複数残っています。まず小規模宅地等の特例は引き続き有効で、被相続人の居住用宅地330㎡まで80%の評価減が可能です。タワマンの敷地持分は通常50〜200㎡程度なので、ほぼ全面適用できます。配偶者居住権との組み合わせで二次相続の負担も軽減できます。

生前贈与の活用も継続して有効です。暦年贈与の年110万円基礎控除を10〜20年単位で計画的に行う方法と、相続時精算課税の2,500万円特別控除+年110万円基礎控除を組み合わせる方法があります。マンション持分(共有持分)として段階的に贈与する方法は、価額の細分化で贈与税負担を抑えやすい手法です。

家族信託の活用も視野に入ります。タワマンの管理権限を信頼できる家族に委ねつつ、収益(賃貸の場合の家賃)は委託者本人が受け取る設計が可能です。認知症リスクへの備えとしても機能します。

賃貸併用での評価減も使えます。タワマンを賃貸用に出すと、土地は「貸家建付地」評価で借地権割合(住宅地で60〜70%)と借家権割合(30%)の控除があり、建物は「貸家」評価で借家権30%控除がかかります。改正後の補正と組み合わせても、自宅用より評価額を抑えられる手段です。

2027年見直しの方向性と「駆け込み贈与」の現実解

マンション評価通達は、相続税評価額と市場価格の乖離を3年ごとの固定資産税評価替えに合わせて適宜見直すと国税庁が表明しています。これに沿えば、次回は2027年(令和9年)の評価替え時期に通達が見直される可能性があります。専門家やメディアでは、補正率の引き上げ・対象範囲の拡大(戸建てへの波及)・評価水準0.6基準の見直しなどが議論される可能性が指摘されていますが、いずれも現時点で公式に決まった方針ではありません。

仮に2027年の見直しで補正がさらに厳しくなる場合に備えて、現実的に検討できる対策は次の3つです。ただし、見直しが実際に行われるか、行われるとして新しいルールがいつの相続・贈与から適用されるかは現時点では確定していません。過去の通達改正(2023年10月公表→2024年1月1日適用)と同じパターンをたどれば、見直し公表後の一定日付以降の取得分から新ルールが適用される可能性がありますが、確約はない点に注意してください。

1つ目は暦年贈与の活用。年110万円の基礎控除内で持分を贈与する方法です。現時点では2026年中の贈与は現行ルールで評価される見込みですが、見直しの適用時期が未確定のため、贈与のタイミングは専門家と相談しながら判断してください。

2つ目は相続時精算課税による大口贈与。2,500万円の特別控除と年110万円の基礎控除を組み合わせ、2026年中にマンション持分の大部分を贈与する方法です。受贈者は被相続人の死亡時に相続財産として贈与時の評価額で精算するため、評価額の低い時期に贈与しておく駆け込み効果が大きい手法です。

3つ目は家族信託契約での信託譲渡。マンションの所有名義を受託者に移しつつ、収益は委託者本人が受け取る設計で、認知症対応と将来の評価ルール変更への備えを兼ねます。

ただし注意点として、2027年の見直しが必ず厳格化の方向で行われるとは限らないこと、駆け込み贈与で慌てて持分を移すと贈与税負担や名義変更コストが本来不要な負担になることもあります。被相続人本人の年齢・健康状態・財産全体の構成・家族関係を総合的に見て、無理のないペースで進めるのが現実的です。

まとめ

マンション評価通達の改正(2024年1月施行)で、タワマンによる相続税節税効果は約半分に縮小しました。築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素から計算する評価乖離率が時価との乖離を反映する仕組みで、新築・高層階・都心部のタワマンほど補正幅が大きくなります。改正後も小規模宅地の特例・生前贈与・家族信託・賃貸併用の評価減は引き続き使えるため、節税スキーム全体を組み合わせる戦略が有効です。2027年に予定される通達見直しでは補正率のさらなる引き上げや対象範囲の拡大が議論される可能性があるため、2026年中の駆け込み対策(暦年贈与・相続時精算課税・家族信託)を視野に入れた検討が現実的です。被相続人の年齢・健康状態・財産全体のバランスを見ながら、専門家と相談して無理のない計画を立ててください。

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