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亡くなった親の固定資産税は誰が払う?納税義務の引き継ぎと相続人代表者指定届を解説

2026年08月20日
法務税務

親が亡くなった後も、固定資産税の納付書は届き続ける

親御さんが亡くなって間もない時期に、市役所から固定資産税の納付書や「相続人代表者指定届」という書類が届き、「これは誰が払うのか」「払ったら不利になるのか」と戸惑う方は少なくありません。

滋賀県内でも、実家や田畑、貸家を持ったまま親御さんが亡くなり、遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を決める話し合い)が終わる前に納期が来てしまうケースは日常的に起きています。固定資産税は放置すると延滞金が発生し、市町村からの督促は相続人に届きます。一方で、「うっかり払うと相続放棄ができなくなるのでは」という不安もよく聞かれます。

実際のご相談でも、納付書や指定届を受け取って「自分が支払いの責任を負うことになるのか」を気にされる方は多くいらっしゃいます。この記事では、亡くなった方(被相続人)の固定資産税を「誰が」「いつまでに」「どう精算して」払うのかを、順を追って整理します。

固定資産税は「1月1日の所有者」に課税される

固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点の所有者に対して、その年度分の全額が課税される税金です(根拠:地方税法第343条・第359条)。税率は標準で1.4%、納期は市町村によって異なりますが、年4回に分かれているのが一般的です。

このルールを相続に当てはめると、次の2つの場面に分かれます。

年の途中で亡くなった場合(その年度分)

1月1日時点では親御さんが所有者だったため、その年度分の納税義務は親御さんに発生しています。亡くなった後は、この納税義務を相続人が引き継ぎます。納付書がすでに届いている分も、これから届く分も、相続人が納める必要があります。

翌年の1月1日までに相続登記が済んでいない場合(翌年度分)

翌年の1月1日を過ぎても登記名義が親御さんのままの場合、市町村は「現に所有している者」、つまり相続人全員に課税します。遺産分割協議がまとまっていない間は、相続人全員が共有で所有している扱いになり、全員が連帯して納税義務を負います。「自分は実家を相続しない予定だから関係ない」と思っていても、協議がまとまるまでは納税義務から外れられない点に注意してください。

「相続人代表者指定届」は何のための書類か

相続が発生すると、市町村から「相続人代表者指定届」の提出を求められることがあります。これは、固定資産税の納税通知書や納付書を誰に送るかを決めるためだけの書類です(地方税法第9条の2)。

重要なのは、この届出には次の効果がないことです。

  • 代表者がその不動産を相続することにはならない(遺産分割の結果とは無関係)
  • 代表者だけが納税義務を負うわけではない(相続人全員の連帯納税義務は変わらない)
  • 相続登記の代わりにもならない

「代表者になったら実家を押し付けられるのでは」と心配して提出をためらう方がいますが、書類の性質としてはあくまで郵送先の指定です。提出しない場合は市町村が代表者を指定することもあります。

なお、登記名義人が亡くなったことを市町村が把握できない場合に備えて、相続人(現所有者)に申告を求める「現所有者申告」の制度もあります(地方税法第384条の3)。多くの市町村では、現所有者であることを知った日から3か月以内などの期限が条例で定められており、正当な理由なく申告しないと過料の対象になることがあります。

遺産分割前に立て替えて払ったらどうなるか

払っても相続放棄には原則影響しない

固定資産税の納付を理由に相続放棄ができなくなるのではないか、という質問は非常に多いのですが、被相続人の債務を相続人自身の財産(自分の預金など)から支払うことは、一般に相続財産の処分にはあたらないと考えられています。ただし、遺産の預金を引き出して支払うと相続財産の処分と評価されるリスクがあるため、放棄を検討している方は支払い方に注意が必要です。判断に迷う場合は、相続放棄の手続きと3か月の期限の記事も参考に、手を付ける前にご相談ください。

立替分は遺産分割協議で精算する

誰かが立て替えた固定資産税は、最終的には遺産分割協議の中で精算するのが一般的です。方法としては、立替分を相続財産から先に支払う形にする、不動産を取得する人が負担する形で調整する、などがあります。後でもめないために、立て替えた人は納付書の控えと領収証書を必ず保管し、遺産分割協議書に精算の取り決めを一文入れておくと確実です。ご相談の場でも、一度払ってしまうと取り返しがつかないと感じて支払いをためらう方は少なくありませんが、最終的に立替扱いとして遺産分割の中で調整できることをお伝えすると、安心して納期に間に合わせられたというケースが多くあります。

相続税の債務控除になる固定資産税

相続税の計算では、被相続人が残した債務を遺産総額から差し引けます(債務控除。根拠:国税庁タックスアンサーNo.4126 相続財産から控除できる債務)。固定資産税については、亡くなった日の時点で納税義務が確定していた年度分のうち、まだ納めていなかった金額(納期が来ていない分を含む)が債務控除の対象になります。

たとえば3月に亡くなり、その年度分の固定資産税をまだ1回も納めていなかった場合、その年度分の全額を債務控除に入れられるのが原則です。納付書や課税明細書は相続税申告の資料になるため、捨てずに保管してください。

放置するとどうなるか|登記と納税はセットで進める

固定資産税の納付だけ続けて相続登記を放置すると、翌年度以降も相続人全員への課税が続くうえ、2024年から義務化された相続登記の期限(取得を知った日から3年以内)にも抵触します。義務化の内容と期限は相続登記の義務化で何が変わった?で詳しく解説しています。

また、誰も住まなくなった実家の固定資産税を払い続けること自体が負担になるケースでは、売却や活用の検討も選択肢です。滋賀県で空き家を相続したらどうする?で放置リスクと選択肢を整理しています。

まとめ

亡くなった親の固定資産税は、その年度分は相続人が納税義務を引き継ぎ、翌年度以降も登記が済むまでは相続人全員が連帯して負担します。相続人代表者指定届は納付書の送付先を決めるだけの書類で、遺産分割の結果には影響しません。立替分は領収証書を残して遺産分割協議で精算し、死亡時点で未納だった分は相続税の債務控除に忘れず反映させてください。納税・登記・相続税申告は別々の手続きに見えて、実際にはひとつながりです。相続は多くの方にとって身近な手続きではないため、進めるほどに細かい疑問が尽きません。当初はご自身ですべて手続きするつもりで始めたものの、「もっと早く相談すればよかった」というお声を多くいただきます。早めに全体の段取りを決めることが、負担ともめごとを減らす近道になります。

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