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相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは|1.6億円の仕組みと申告の注意点

2026年04月17日
税務
相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは|1.6億円の仕組みと申告の注意点

配偶者は相続税がかかりにくい、でも「申告不要」ではありません

配偶者(夫または妻)が遺産を受け取る場合、「配偶者の税額軽減」という制度があります。この制度を使うと、一定の金額までは相続税がかかりません。そのため「配偶者への相続なら税金は関係ない」と考えている方が多くいます。

しかし、この制度には重要なルールがあります。相続税がゼロになる場合でも、相続税の申告書を提出しなければ、税額軽減が適用されません。

「申告が不要=手続きも不要」ではないため、このポイントは実務上、非常に間違いが起きやすい箇所です。実際に「配偶者控除を使えば相続税がゼロになるから、申告自体しなくていいと思っていた」という相談は頻繁にあります。申告期限や申告の必要性をお伝えすると驚かれる方が少なくありません。

配偶者の税額軽減の仕組み:1.6億円か法定相続分のどちらか大きい方

配偶者の税額軼減(相続税法第19条の2)では、配偶者が実際に取得した遺産のうち、次の2つのどちらか大きい金額までは相続税が課税されません(国税庁 タックスアンサー No.4158)。

非課税の上限(2つのうち多い方が適用)
①1億6千万円
②配偶者の法定相続分相当額
①と②の使い分け

相続財産が1億6千万円を下回る場合、配偶者がすべてを取得しても相続税はかかりません。

相続財産が1億6千万円を超える場合は、法定相続分相当額との比較が重要になります。たとえば、遺産の総額が3億円で法定相続分が2分の1(子1人の場合)であれば、法定相続分相当額は1億5千万円となり、1億6千万円の方が大きいため1億6千万円が上限になります。

遺産が4億円で法定相続分が2分の1の場合、法定相続分相当額は2億円となり、この場合は2億円が上限になります。つまり遺産が大きくなればなるほど、法定相続分の方が有利になるケースがあります。

この制度が対象にしない財産

隠蔽または仮装されていた財産は、税額軽減の対象に含まれません(相続税法第19条の2)。相続税の申告において、財産を正確に申告することは制度適用の前提になります。

申告要件:税額ゼロでも申告書の提出が必須

配偶者の税額軽減を受けるためには、相続税の申告書の提出が必要です。これは、軽減後の相続税額がゼロになる場合でも同じです。

申告書に添付する主な書類は次のとおりです。

  • 戸籍謄本(配偶者であることの確認)
  • 遺産分割協議書の写し(相続人全員の印鑑証明書付き)または遺言書の写し
  • 配偶者が取得した財産の内容がわかる資料

申告期限は、被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。滋賀県内の税務署(大津税務署・草津税務署など)への提出が必要です。相続税申告を当法人にご依頼いただく場合は問題ありませんが、ご自身で手続きされる場合は添付書類や税額軽減の要件など確認事項が多いため注意が必要です。不安がある方は、早めに税理士に相談されることをおすすめします。

期限内に遺産分割が終わらない場合の対処

遺産分割の話し合いが申告期限(10か月)までにまとまらないことがあります。相続人間で意見が分かれている場合や、相続財産の評価に時間がかかる場合がその典型です。

この場合、原則として分割が確定していない財産には配偶者の税額軼減を適用できません。しかし、次の手順を踏むことで、後から適用を受けられます。

手順:「申告期限後3年以内の分割見込書」を活用する
  1. 申告期限(10か月)内に、法定相続分で計算した相続税を一度申告・納付する
  2. 申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する
  3. 申告期限から3年以内に遺産分割を完了させる
  4. 分割碼定後4か月以内に「更正の請求」を行い、配偶者の税額軽減を適用して過払い分の還付を受ける

3年以内に分割できないやむを得ない事情がある場合は、税務署長の承認を受けることでさらに期間が延長されることがあります。

この手順を踏まないと、後から分割が完了しても税額軽減が受けられなくなるため、申告期限内に「見込書」を添付することが重要です。

配偶者控除を使いすぎると二次相続の税負担が増えることがある

配偶者の税額軽減は強力な制度ですが、配偶者に財産を集中させすぎると、二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)で子どもたちの税負担が大きくなるリスクがあります。一次相続で節税しすぎた結果、二次相続で逆に高額な相続税が発生するケースは実際に多くあります。配偶者への分配割合は、一次・二次の両方をシミュレーションした上で決めることが重要です。

詳しいメカニズムと対策については、二次相続で相続税が大幅に増える理由の記事をご覧ください。

内縁関係・事実婚の配偶者には適用されない

配偶者の税額軼減が適用されるのは、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られます。内縁の夫・妻や事実婚のパートナーは、たとえ長年生活を共にしていても対象外です。

この点は、相続対策を早期に進める理由のひとつになります。内縁関係のまま相続が発生すると、相続権自体がない(法定相続人でない)ため、遺言書による手当が唯一の方法になります。何らかの理由で婚姻届を出していない方もおられますが、相続税の面では内縁関係は不利になります。配偶者の税額軼減が使えないだけでなく、相続税額の2割加算の対象にもなるため、事前の対策が重要です。

まとめ

配偶者の税額軽減は、1億6千万円または法定相続分のどちらか大きい金額まで相続税がかからない強力な制度です。ただし、次の点を確実に押さえておく必要があります。

  • 相続税がゼロになる場合でも、申告書の提出は必須
  • 申告期限(10か月)内に遺産分割が完了していない部分には原則適用不可(「見込書」添付で対応可能)
  • 内縁・事実婚の配偶者には適用なし
  • 配偶者への集中は二次相続の税負担増につながるため要注意

税理士に依頼することで、配偶者控除の最大活用と二次相続の負担軽減を同時に検討できます。

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