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親の預金を生前に無断引き出しされた場合の対処法|相続財産の使い込み問題を解説

2026年04月09日
税務
親の預金を生前に無断引き出しされた場合の対処法|相続財産の使い込み問題を解説

導入:相続の現場で増加する「預金の使い込み問題」

相続トラブルの中でも特に多いのが「預金の使い込み」です。親が亡くなった後、遺産の相続手続きを進める中で、「実は親の預金が勝手に引き出されていた」という事実が明らかになるケースが珍しくありません。

裁判所の司法統計によると、令和6年の遺産分割事件数は15,379件に達し、平成12年の8,889件から大幅に増加しています。そのうち約76%は遺産額5,000万円以下の一般的な家庭です。つまり、相続トラブルは「どんな家庭にでも起こり得る」ということです。

親の通帳から勝手に引き出されたお金は、相続財産として守られるべき大切な遺産です。もし、このような問題に直面しているのであれば、早期に対処することが重要です。この記事では、親の預金を無断引き出しされた場合の対処方法と、法的な請求手段についてわかりやすく解説します。

私どもが相続税申告のサポートを行う際は、相続開始以前の通帳をお預かりし、お金の流れを把握した上で財産を確定させるようにしています。こうした対応を心がけることで、使い込みなどについての後からの指摘を防ぐことにもつながっています。

親の預金の無断引き出しはなぜ起きるのか

認知症や入院中の親を狙った無意識の引き出し

親が認知症や重度の疾病で判断能力を失った後、同居している子どもや配偶者が「親の医療費や生活費が必要だから」という名目で、親の預金を引き出すケースがあります。本人は親のために使っていると考えていても、他の相続人にとっては「親の承認なき引き出し」として問題になります。

親が亡くなった直後の計画的な引き出し

相続発生の直後、相続人の一人が他の相続人に知らせる前に、親の預金口座から大金を引き出すケースもあります。銀行が死亡を認識する前(口座凍結される前)に、急いで引き出すという行為です。これは意図的な使い込みであり、法的に大きな問題となります。

親の意思能力がない時点での引き出し

親が介護老人施設に入所中や入院中など、預金を使う意思や判断能力がない時点で、親名義の口座から定期的にお金を引き出し続けるケース。本人は「親のための必要な支出」と考えていても、客観的な証拠がなければ、使い込みと判断される可能性があります。

使い込みが疑われる場合の確認手順

取引履歴の入手方法と確認のポイント

親の預金使い込みが疑われる場合、第一步は「証拠を確保する」ことです。被相続人(亡くなった親)の預金口座の取引履歴が、使い込みの時期や金額を特定するための最重要証拠になります。

取引履歴の取得方法:

  1. 相続人であることを証明する書類を持って銀行に出向く
  2. 親の死亡を証明する戸籍謄本(除籍謄本)
  3. 相続人であることを証明する戸籍謄本
  4. 請求者の身分証明書
  5. これらを持参すれば、ほぼ全ての銀行で取引履歴の開示を受けられます
  6. 過去10年分の通帳履歴をすべて取得する
  7. 銀行によっては10年以上前の情報は開示できないケースもあります
  8. 複数の銀行に口座がある場合は、全ての銀行から取引履歴を取得する必要があります
  9. 不自然な引き出しパターンをチェック
  10. 毎月定額の引き出しが、親の生活費では説明できない額になっていないか
  11. ATMでの大口現金引き出しが集中していないか
  12. 親が病床にあった時期に、通常と異なる引き出しがないか

私どもの実務では、取引履歴を確認する中で使途不明金を発見することがあります。そのような場合は相続人に確認を取り、説明がつかない引き出しが判明したときは、相続人の間で話し合っていただく流れになることが多いです。

法的な対処手段

不当利得返還請求の仕組み

親の預金を無断で引き出した相続人に対しては、「不当利得返還請求」という法的な手段を使って返金を求めることができます。

不当利得とは:法律上の根拠がないのに、他人の財産を取得した場合のこと。親の預金を無断で引き出した行為は、法律上の根拠(親からの承認や委任)がないため、不当利得に該当します。

請求内容:

  • 引き出された金額全額の返金
  • 返金までの間の利息(年5%または年3%)
  • 場合によっては損害賠償請求も可能
損害賠償請求との違い

不当利得返還請求と似た概念に「損害賠償請求」があります。

不当利得返還請求:相手が得た利益を返させるという請求。返されるのは「引き出された金額」です。

損害賠償請求:親に与えた精神的損害や、問題解決に要した費用(弁護士費用など)を賠償させるという請求。

使い込みが起きた場合、多くのケースでは「不当利得返還請求」と「損害賠償請求」の両方を組み合わせて行います。

立証の難しさと専門家への相談

預金の使い込みを主張する際に、最大の課題は「証拠」です。以下のポイントに注意してください。

証拠として有効な資料:

  • 被相続人の通帳の取引履歴(最も重要)
  • 使い込んだ相続人の通帳記録(弁護士権限で開示請求可能)
  • 親の認知症診断書や介護記録(親の判断能力喪失を証明)
  • 医療記録や入院診断書(親の状態を証明)
  • ATM利用履歴やクレジットカード利用明細

立証が難しいケース:

  • 親が生前に「了承していた」と使い込んだ相続人が主張する場合
  • 親の介護費用や医療費として使ったと説明される場合
  • 引き出された金額が少額で、使途が日常生活費と見分けがつきにくい場合

このような複雑な状況では、個人での対処は難しく、弁護士への相談が必須です。弁護士は相手方の口座記録を開示請求したり、相手方の言い分に対する法的反論を組み立てたりすることができます。

遺産分割協議での扱いと注意点

相続人が使い込みを認めた場合

相続人が預金の使い込みを認めている場合、その後の対応は比較的シンプルです。

相続税法上、「相続発生後の遺産分割前の使い込み」について、2019年の相続法改正により、処分相続人以外の同意があれば、使い込まれた相続財産が遺産分割時に存在するものとみなすことができるようになりました。

つまり、使い込んだ金額を「遺産として存在する」と扱った上で、遺産分割協議を進めることができます。その場合、使い込んだ相続人の相続分を減らす方向で調整します。

例:遺産が1,000万円で、相続人が子ども3人(均等相続)の場合、本来なら一人333万円となります。しかし、長男が300万円を使い込んでいた場合、遺産を「1,300万円存在する」と扱い、遺産分割協議を進める方法があります。

相続人が使い込みを否定した場合

相続人が使い込みを認めない場合、遺産分割協議では話がまとまりません。このとき、以下の手段が考えられます。

  1. 家庭裁判所の遺産分割調停に進む
    相続人全員が合意できるまで、調停委員会が仲介に入る制度
  2. 遺産分割審判に進む
    調停がまとまらない場合、家庭裁判所の審判により強制的に分割方法を決める手続き
  3. 不当利得返還請求訴訟を別途提起する
    遺産分割とは別に、簡易裁判所や地方裁判所で民事訴訟を提起する方法

生前の使い込みと相続後の使い込みの違い

親が生きている時点で使い込みが発生していた場合と、親が亡くなった後に使い込みが判明した場合では、法的な対応が異なります。

親が生きている時点での使い込み:

  • 親本人が直接、使い込んだ相続人に返金を求めることができます
  • 親が認知症で判断能力がない場合、成年後見人制度を利用して対応します
  • 刑事告訴も検討できる(ただし、親族間の犯行は親族相盗例により刑が免除される可能性があります)

親が亡くなった後の使い込み:

  • 他の相続人が不当利得返還請求や損害賠償請求を行う
  • 遺産分割協議や調停で対処する
  • 相続税申告時に「相続財産から除外された使い込み分」として対応する

滋賀県における相続トラブルの現状と対策

滋賀県の高齢化率は27.5%(令和6年9月15日現在)であり、全国平均と比較しても高齢化が進んでいます。これに伴い、認知症による判断能力の低下に関連した相続トラブルが増加傾向にあります。

認知症高齢者が増加する中、親の預金を「親のための支出」と称して使い込むケースも増えています。滋賀県内でも、こうした相続トラブルに関する相談は年々増加しており、早期対応の重要性が高まっています。

まとめ

親の預金を無断で引き出された場合、以下のポイントを押さえて対応することが重要です:

  1. 早期に取引履歴を確保する – 銀行から過去10年分の通帳を取得し、不自然な引き出しをチェック
  2. 証拠を集める – 親の状態(認知症診断など)と引き出しのタイミングを対応させる証拠を収集
  3. 話し合いを試みる – 可能であれば相続人全員で協議し、返金の意思確認をする
  4. 調停や訴訟を検討する – 話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所や民事訴訟での解決を視野に
  5. 専門家に相談する – 税理士や弁護士との連携で、税務と法律の両面からサポートを受ける

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滋賀県草津市に拠点を置いており、草津市・大津市・守山市・栗東市・彦根市・近江八幡市など滋賀県全域の相続に対応しています。

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