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遺留分侵害額請求の基礎知識|相続で「取り分が少ない」と感じたら

2026年04月07日
法務
遺留分侵害額請求の基礎知識

遺言による相続で「取り分が少ない」と感じたら

相続が発生したとき、多くの人は遺言書があれば「それに従わなければいけない」と考えます。しかし相続法には「遺留分」という権利があり、被相続人の遺言だけでは侵害できない最低限の相続分が保障されています。

たとえば「すべての遺産を長男に相続させる」という遺言があった場合、他の相続人(配偶者や次男など)は、その遺言に基づいて相続手続きが進まれても、自分たちの遺留分に相当する金銭を請求する権利があります。これが「遺留分侵害額請求権」です。

滋賀県でも、相続税申告件数が2019年で1,256件あり、その過程で遺言と法定相続分のズレが生じるケースは珍しくありません。また、滋賀県の高齢化率は27.5%に達しており、世代交代に伴う相続が急増しています。遺留分について理解することは、相続トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。

弊社でも、親御さんの意向を汲んで「すべての財産を特定の方に相続させる」という遺言を作成したいというご相談は多い。遺留分という権利があることは知りつつも、お世話になった方や事業を継ぐ方に財産を集中させたいと考える親御さんは少なくない。ただし、その場合でも他の相続人には遺留分が残るため、遺言を書く段階で遺留分への対応を考えておくことが大切になる。

遺留分とは何か——相続法で保障された最低限の権利

遺留分の仕組み

遺留分(いりゅぶん)とは、被相続人(亡くなった方)の遺言だけでは侵害できない、特定の相続人に保障された最低限の相続分のことです。

兄弟姉妹以外の法定相続人に認められています。対象になる相続人は以下の通りです:

  • 配偶者(被相続人の夫または妻)
  • 直系卑属(子、孫など)
  • 直系尊属(親、祖父母など)

ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。兄弟姉妹が相続人の場合、遺言の内容によって相続財産をもらえないことがあります。

遺留分の割合

遺留分の割合は、相続人の構成によって決まります。

相続人の構成遺留分の割合
配偶者のみ相続財産の2分の1
子のみ相続財産の2分の1
親のみ相続財産の3分の1
配偶者と子相続財産の2分の1
配偶者と親相続財産の2分の1

例えば、相続人が「配偶者と子ども1人」の場合、相続財産全体の遺留分は2分の1となります。その2分の1を配偶者と子どもで按分するため、配偶者は2分の1の2分の1(つまり4分の1)、子どもも4分の1となります。

2019年改正で何が変わったか——「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」へ

改正前後の大きな違い

2019年7月1日に相続法が改正され、遺留分を取り戻す制度が「遺留分渜殺請求」から「遺留分侵害額請求」に変わりました。この変更は、相続人にとって非常に重要です。

改正前の「遺留分渜殺請求」では、遺言に基づいて得た相続人から「現物」(土地や建物、株式など)で返還を受けることが原則でした。一方、改正後の「遺留分侵害額請求」では、遺留分に相当する金銭の支払いを請求するしくみに統一されました。

改正のメリット:

  • 相続人が金銭で受け取るため、遺産の分割が簡潔になった
  • 受遺者(遺言で財産をもらった人)が不動産などを手放す必要がなくなった
  • 争いの種となりやすかった「遺産の現物分割」が渜った

もらえる金額はどう計算する?——遺留分侵害額の3ステップ計算法

遺留分侵害額請求で「実際にいくら請求できるのか」は、以下の3つのステップで計算します。

ステップ1:遺留分を計算するための相続財産を確定する

まず、被相続人が亡くなったときに所有していた財産をすべて把握します。

含まれるもの:

  • 預金、現金
  • 不動産(土地、建物)
  • 株式、投資信託
  • 生命保険金(一部)
  • 自動車、骨董品などの動産

含まれないもの:

  • 債務(借金、ローン)——相続財産の額から控除される

計算式:`相続財産の総額 = 被相続人の全資産 + 生命保険金(一部)- 債務の全額`

ステップ2:遺留分割合を確認する

相続人の構成に応じて、遺留分の割合を決めます(前述の表参照)。

その後、自分自身の「個別的遺留分」を計算します。

計算式:`自分の個別的遺留分 = 総体的遺留分 × 自分の法定相続分`

ステップ3:実際にもらえる金額を計算する

相続財産の総額に個別的遺留分をかけて、遺留分侵害額を計算します。

計算式:`遺留分侵害額 = 相続財産の総額 × 個別的遺留分割合`

具体例:

相続財産が4,000万円で、相続人が「配偶者と子ども2人」の場合:

  • 総体的遺留分 = 2分の1(4,000万円 × 0.5 = 2,000万円)
  • 配偶者の法定相続分 = 2分の1、子どもはそれぞれ4分の1
  • 配偶者の個別的遺留分 = 0.5 × 0.5 = 4分の1
  • 配偶者がもらえる遺留分額 = 4,000万円 × 0.25 = 1,000万円

よくある誤解——「遺留分=相続税と同じ計算」ではない

遺留分と相続税は別の計算体系です。この混同がトラブルの原因になることがあります。

遺留分:民法で定められた「遺言でも奪えない最低限の相続分」

  • 対象者:配偶者、子、親など(兄弟姉妹は対象外)
  • 計算対象:被相続人の全資産 + 過去の特定の贈与
  • 目的:相続人の生活保障

相続税:税法で定められた「遺産総額に対する税金」

  • 対象者:相続人全員
  • 計算対象:課税価格(基礎控除額を超える部分)
  • 目的:税務当局への納税義務

遺留分について決めてから、相続税の計算をする必要があります。

遺留分侵害額請求の手続き——何をいつまでにするのか

請求権の時効は「1年」と「10年」の2つ

遺留分侵害額請求には、厳格な期限があります。この期限を超えると、請求権が完全に消滅してしまいます。

時効①:相対的時効(1年)「相続が開始したこと」と「遺留分を侵害する遺贈や贈与があったこと」を知ってから1年以内に請求する必要があります。

多くの人は遺言の内容を聞いたときから1年のカウントが始まると勘違いしていますが、正確には「遺贈または贈与の存在を知った時点」がスタートとなります。

時効②:絶対的時効(10年)相続の開始から10年が経過した場合、遺留分の内容がどうであれ請求権は消滅します。

弊社では相続税の申告をお手伝いすることが多く、遺留分の請求を「される側」の立場でご相談を受けるケースが多い。請求された場合、いつまでにどう対応すべきか、支払い資金をどう確保するかといった実務的な話が中心になる。請求する側・される側のいずれであっても、期限を正しく把握しておくことが重要。

請求の流れ
第1段階:意思表示(内容証明郵便で通知)

遺留分侵害額請求は、配達証明付きの内容証明郵便で相手方(受遺者または受贈者)に通知するのが一般的です。口頭や普通の手紙では、後々「言った、言わない」になる可能性があり、時効の起算点も曖昧になるためです。

内容証明郵便には、以下の内容を記載します:

  • 自分が相続人であること
  • 被相続人の氏名と死亡日
  • 遺留分の計算根拠(相続財産の総額、自分の遺留分割合)
  • 請求額
  • 支払い期限(通常は30日程度)
第2段階:交渉

内容証明郵便を送付した後、相手方との交渉を行います。相手方が素直に応じれば、話し合いで合意する方法もあります。

しかし、相手方が「遺留分侵害額請求に応じない」または「金額に納得しない」という場合、次のステップに進みます。

第3段階:調停申し立て

遺留分侵害額請求は調停前置きとされており、原則として訴訟よりも先に家庭裁判所での調停を申し立てなければなりません。

調停では、中立的な調停委員が間に入り、両者の主張をまとめます。調停で合意に至れば、「調停調書」が作成され、法的な効力を持つようになります。

第4段階:訴訟(裁判)

調停でも決着がつかない場合、地方裁判所に訴訟を提起します。

裁判では、相手方が遺留分請求に応じるかどうかについて、法的に判断されます。判決が下されるまで数か月〜1年程度かかることがあります。

弁護士・司法書士に依頼したほうがいいケース

遺留分侵害額請求は、一見シンプルに見えても、実務的には複雑な問題が多々あります。以下の場合は、弁護士や司法書士に相談することを強くお勧めします。

依頼をお勧めするケース:

  • 相続財産の把握が困難な場合(隠し財産がないか不安)
  • 相手方が強く反発している場合
  • 計算に関する根拠資料が揃っていない場合
  • 調停や訴訟になる可能性が高い場合
  • 遺留分を請求する側の相続人が複数人いる場合

弁護士の役割:

  • 遺留分侵害額の正確な計算
  • 内容証明郵便作成のサポート
  • 相手方との交渉代行
  • 調停・訴訟の代理人

滋賀県では相続専門の弁護士が複数おり、無料相談に応じている事務所も多いため、一度相談してみることをお勧めします。

まとめ

遺留分侵害額請求は、相続人に認められた重要な権利です。しかし「知らずに期限を過ぎてしまった」「計算方法が分からない」といった相談が後を絶ちません。

重要なポイントをまとめます:

  • 遺留分は相続人の生活を守る権利。兄弟姉妹以外なら、遺言でも侵害できない
  • 計算方法は3ステップ。相続財産 × 個別的遺留分割合で、実際の請求額が決まる
  • 時効は「1年」と「10年」。遺言の内容を知ってから1年、相続開始から10年以内に請求を
  • 請求は内容証明郵便から。交渉、調停、訴訟という段階を踏む
  • 複雑な場合は専門家へ。弁護士や司法書士のサポートが有効

相続は人生で一度か二度しか経験しない出来事です。自分の権利を正しく理解し、トラブルが生じた場合は早めに専門家に相談することが、最良の解決策となります。

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滋賀県草津市に拠点を置いており、草津市・大津市・守山市・栗東市・彦根市・近江八幡市など滋賀県全域の相続に対応しています。

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