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2026年度税制改正|貸付用不動産の「5年ルール」で相続税の節税はどう変わる?

2026年03月26日
税務
2026年度税制改正|貸付用不動産の「5年ルール」で相続税の節税はどう変わる?

貸付用不動産を使った節税に「5年ルール」が導入される

2025年12月に公表された2026年度(令和8年度)税制改正大綱で、相続税における貸付用不動産の評価方法が見直されることが決まった。適用開始は令和9年(2027年)1月1日以降の相続・贈与からだ。 改正の柱は2つある。 1つ目は「5年ルール」。 相続開始前5年以内に取得または新築した貸付用不動産について、従来の路線価方式ではなく、取得価額をベースに地価変動を考慮した価額の80%で評価する。 2つ目は不動産小口化商品の時価評価。 任意組合型・賃貸型・信託受益権型の不動産小口化商品は、取得時期にかかわらず、相続開始時の時価(通常の取引価額)で評価されることになった。 GrowUpでは、この改正についてクライアントからの相談はまだそれほど増えていないが、適用開始が近づくにつれて問い合わせが増加することが予測される。

なぜこの改正が行われるのか

背景にあるのは、不動産の市場価格と相続税評価額の大きな乖離だ。 国税庁が2024年に公表した事例では、21億円で購入した賃貸マンションが相続税の計算上わずか4.2億円と評価されたケースがあった。市場価格の約80%が評価上「消ぉた」ことになる。また、3,000万円で購入した不動産小口化商品が480万円と評価された事例も報告されている。 こうした乖離を利用して、相続直前に高額な賃貸不動産を購入し、相続税の課税価格を圧縮する手法が広がっていた。2024年にはタワーマンションの評価方法が見直されたが(乖離率に基づく補正の導入)、今回の改正は賃貸不動産全般と不動産小口化商品にまで対象を広げたものだ。

「5年ルール」の具体的な仕組み

対象となる不動産
相続開始前5年以内に取得(購入または新築)した貸付用の土地・建物が対象になる。「貸付用」とは、賃貸アパート・賃貸マンション・貸駐車場など、第三者に貸し付けている不動産を指す。 自宅や事業用(自社使用)の不動産は対象外だ。また、5年超前から保有している賃貸不動産も従来どおりの路線価方式で評価される。
評価方法
対象不動産の評価額は、以下の計算で求める。 評価額 = 取得価額 × 地価変動率等の調整 × 80% ※「地価変動率等の調整」の具体的な計算方法は、今後の通達・省令で定められる予定だ。上記はあくまで税制改正大綱に基づく概念的な計算式であり、確定したものではない点に注意してほしい。 従来の路線価方式では、土地は公示価格の約80%、建物は固定資産税評価額(時価の約50〜70%)で評価されていた。さらに貸家建付地の評価減(借地権割合×借家権割合30%)、小規模宅地等の特例(200㎡まで50%減額)を重ねると、最終的な評価額が市場価格の20〜40%程度まで下がるケースもあった。 新ルールでは取得価額の80%がベースになるため、このような大幅な圧縮は難しくなる。
適用時期と注意点
令和9年(2027年)1月1日以降に発生する相続・贈与から適用される。改正前の令和8年(2026年)中に購入した物件であっても、相続が2027年以降に発生し、かつ取得から5年以内であれば新ルールが適用される。 つまり、2026年中に「駆け込み購入」をしても、相続が2027年以降に起きた場合は新ルールの対象になる。この点は特に注意が必要だ。

不動産小口化商品はさらに厳しい評価に

不動産小口化商品(任意組合型・賃貸型・信託受益権型)については、5年ルールよりもさらに厳しい取り扱いになった。取得時期にかかわらず、相続開始時の時価(通常の取引価額)で評価される。 従来は、不動産小口化商品であっても実物不動産と同様に路線価方式で評価できたため、少額で購入できて大きな評価減が得られる商品として人気があった。今回の改正により、この節税メリットは実質的になくなる。 実際に、不動産小口化商品を勧められたが買ってよいかという相談が増えている。今後は節税目的だけでは購入を勧められない状況だ。

経過措置と対象外のケース

今回の改正にはいくつかの経過措置が設けられている。 5年超保有の不動産は対象外。 相続開始時点で取得から5年以上が経過している賃貸不動産は、従来どおり路線価方式で評価される。長期保有の不動産を使った相続対策は引き続き有効だ。 新築の経過措置。 改正が通達に定められる日の取得から5年前から保有している土地に建物を新築する場合、その建物がその日までに着工(建築中を含む)していれば、新ルールの対象外になる。すでに計画中の案件が救済される措置だ。 自宅・事業用は対象外。 自宅として使っている不動産や、自社の事業に使用している不動産は今回の改正の対象にならない。小規模宅地等の特例(居住用330㎡まで80%減額、事業用400㎡まで80%減額)も従来どおり使える。

今後の相続対策で考えるべきこと

この改正により、「相続直前に賃貸不動産を購入して評価額を下げる」という手法は大幅に制限される。今後の相続対策では、以下の視点が重要になる。 長期保有の不動産は引き続き有効。 5年超保有の賃貸不動産は新ルールの対象外なので、早い段階で不動産を取得し、長期保有する方針であれば従来と同じ効果が得られる。 不動産以外の生前贈与の活用。 暦年贈与(年間110万円の基礎控除)や相続時精算課税制度(2024年から年間110万円の基礎控除が新設)を活用した生前の資産移転が、相対的に重要性を増す。なお、暦年贈与の基礎控除と相続時精算課税制度の基礎控除はそれぞれ別の制度であり、併用はできない。どちらを選択するかは贈与者ごとに判断が必要だ。相続税の基礎控除について詳しくは「相続税の基礎控除と申告が必要なケース」で解説している。 生命保険の非課税枠の活用。 法定相続人1人あたり500万円の非課税枠がある生命保険金は、不動産評価の見直しに影響されない。詳しくは「生命保険と相続税の非課税枠」を参考にしていただきたい。 GrowUpでは、賃貸不動産を新たに取得される方には、相続対策の面での注意点としてこの5年ルールを説明するようにしている。

まとめ

2026年度税制改正による「5年ルール」は、相続前5年以内に取得した貸付用不動産の評価方法を大きく変えるものだ。従来の路線価方式から取得価額ベース(80%)への変更により、短期的な不動産購入による節税効果は大幅に縮小する。 不動産小口化商品については取得時期を問わず時価評価となるため、節税目的での購入は再検討が必要だ。一方、5年超保有の不動産や自宅・事業用不動産は従来どおりの評価が適用される。 適用開始は2027年1月1日以降の相続・贈与から。今のうちに現在の保有資産を見直し、改正の影響を確認しておくことが大切だ。 相続税額の目安を知りたい方は「相続税額計算シミュレーション」をご利用ください。

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